第3章 神々が恐れたもの・・・それは言葉
神々は人間どもを恐れたわけであるが、具体的に人間たちのどのようなことに恐れたのであろうか。旧約聖書からその箇所を引用してみよう。
・・・主は、人の子らが作ろうとしていた街と塔とを見ようとしてお下りになり、そして仰せられた、「なるほど、彼らは一つの民で、同じ言葉を話している。この業は彼らの行いの始まりだが、おそらくこのこともやり遂げられないこともあるまい。それなら、我々は下って、彼らの言葉を乱してやろう。彼らが互いに相手の言葉を理解できなくなるように」・・・
ギュスターヴ・ドレ『言語の混乱』
ポール・ギュスターヴ・ドレ(Paul Gustave Doré, 1832年1月6日 – 1883年1月23日)は、フランスのイラストレーター、画家(版画家、挿絵画家、彫刻家)。 アルザス地方、ストラスブールのニュエ・ブルー(青い雲)通りに生まれ、パリの聖ドミニク通りで没しペール・ラシェーズ墓地に埋葬された。
15歳の時から画家として活躍した。その後パリに移り、挿絵画家としてダンテやバルザック、フランソワ・ラブレー、ミルトンの挿絵を手がけた。
神は、バベルの塔を築く大工事をする人間たちを恐れたようだ。それは人間たちの行いの始まりで、この後、どんどんいろいろなことを始めるのではないか、と思ったようだ。例えば、科学技術の進歩、そして、新兵器の開発、など。すると自分らの地位が脅かされるではないか。
このような行いを辞めさせるために神々は何をしたのか。
現代の多くの人は次のように理解していると思う。すなわち、神が人間どもが不遜にもバベルの塔を作るのにお怒りになり、得意の雷(いかづち)をブッ放してバベルの塔を破壊、そして人々は驚きの余り、自分たちの今までの言葉を忘れて四分五裂の散り散りになり、種族、民族によっていろいろな言葉を話すようになった、と。なんとも不思議な話だなあ、と。
しかし、それは違う。
旧約聖書では、彼らはバベルの塔をぶち壊してはいない。
・・・我々(神々)は下って、彼らの言葉を乱してやろう。彼らが互いに相手の言葉を理解できなくなるように・・・・
神々は、あくまでも、人々の言葉だけを乱されたようだ。
何も、バベルの塔を壊して多くの人々を殺戮したわけではない。
神々は支配者なのである。彼らは人間たちの生産するものを搾取して生活しているのである。人間たちがいなくなったら生産する人がいなくなる、そうなると元も子もない。
神々は、人間たちの言葉だけを乱されたようだ。そして工事を辞めさせた。
神々は明らかに人間の言葉を恐れたようである。
何故か
何故か
言葉は力なのである。言葉こそ知恵の源泉なのである。
言葉に優れたものが、より力を持つのである。
言葉こそ人間の最大の武器なのである。
考えてみるとまさしくそうであろう。
神々はただただ大きなバベルの塔を恐れたのでもない。
そこにある科学技術を恐れたのでもない。
それらを生み出すものが言葉なのである。
そしていつの間にか土民どもが自分らより上手に言葉を操り、自分らより知恵をつけ始め、自分らより力を持ち始めたことを恐れたのである。
そこで言葉を乱すことにしたのであろう。
さて、神々はどのようにして言葉を乱したのか。それは、次々章で語ろう。
次章では、当時の歴史的背景、また、彼らがどのような言葉を使っていたのかを私なりの解釈を加えて語るものとする。
タロットカード『塔』
タロットカードで最も悪い札とされる「XVI 塔」は、同じ「塔」という人工建造物、塔が破壊されるという扱い、塔から落ちる人間(人間の驕りに対する天罰という解釈)から、このバベルの塔がモチーフになっているといわれているが、創世記には主が塔を破壊するという記述はない
目次
序章 バベルの塔で何が起こったのか? ・・・人間の言葉と神々の恐れること
第1章 神とは?
第2章 神は何を恐れたのか?
第3章 神々が恐れたもの・・・それは言葉
第4章 当時の歴史的背景
第5章 当時の寿命
第6章 神々はどのようにして人々の言葉を乱したのか
目次
序章 バベルの塔で何が起こったのか? ・・・人間の言葉と神々の恐れること
第1章 神とは?
第2章 神は何を恐れたのか?
第3章 神々が恐れたもの・・・それは言葉
第4章 当時の歴史的背景
第5章 当時の寿命
第6章 神々はどのようにして人々の言葉を乱したのか
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